かさ【短編】
雨足は、どんどん強くなっています。ばらばらと音をたてて体に当たる雨が痛いほどでした。
その時…
暗い路地の間から、ふたつの光るものが覗いていました。
よくよく見ると、それは真っ黒な毛並みの子猫でした。
雨に打たれ、体は冷え切り震えています。
「ニャァ…」
鳴き声もとてもか細いものでした。
こちらに向かってすりよってきます。
フランス人形が言いました。
『ほら、必要としてくれる人…猫がいたじゃないの。』