すきなひとみーつけた。







時間はまだ4時半で、仕事帰りなどの人はあまり見られず電車は意外と空いていた。


「あ、あいてる」

電車に乗り込んですぐ横に空いている席があった。

ドアに近いし、座っちゃおう。

近くにご老人がいたわけじゃなかったので、携帯を片手に握りながらドア側の席に座った。


なんだか少し眠かったので、ガタンゴトンと電車に揺られながら目を閉じた。



「はあ…」



祐樹side




駅で花と別れてから電車に乗って空いている席を探していると、あいつが居た。


あ、新藤だ。


「寝てるし。…ぷっ」



少しだけ口を開けて寝ている新藤の寝顔が間抜けで面白かった。

きっと、疲れてるんだな。

なんて思いながら新藤の近くに立って、
新藤の寝顔をちょっと見ていた。




「…ったく。無防備すぎるだろ。」


コクンコクン、と首が少し横に傾いてて、今にも横に倒れそうな状態。


足はちゃんと閉じてるからそこは心配いらないけど。


この時間は電車の乗客者のほとんどが学生だった。中にはもちろん男子もいるわけで…


「…かわいいよな、彼氏いんのかな?」
「いるだろ!」
「でも今一人だし…しかも寝てるってゆーね」
「それなー…」


近くからそんな会話が聞こえる。
チラッと声の聞こえる方を見ると、よく見かける制服をきている男子学生たちだった。

きっと、会話の内容は新藤のことだ。


新藤は、ブサイクじゃない。
(可愛いとは言わない。あえて)

だから、ちょっと心配。
いや、結構心配。


少しだけ気を使って、
新藤の隣にどかっと腰を下ろす。


そして、新藤の話をしていた男子学生たちの方をジロッと睨む。



『こいつ俺の』

って、目で訴えるように。



そしたら男子学生たちは、
新藤から目をそらして電車から降りて行った。



「…ふん。渡さねーから」



俺は、そう一人でつぶやいていた。



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