すきなひとみーつけた。





スタスタスタスタ


「なあなあ」

「…。」

スタスタスタスタ


「おい」

「…。」


スタスタスタスタ


「あ、トールコーヒーだ。」

「えっ!!どこ!!?」

「ぷ。なんてゆーの、これ。色気より食い気?ちがうか」



そう言って あはは、とわざとらしく笑った相澤。


周りを見渡してもトールコーヒーはなかった。私は騙されたんだ。

…悔しい。



電車をおりて改札口から出た時から、
ずっと相澤を無視してスタスタとあてもなく歩いていた。

けど。

単純な嘘に騙されて、
今まで無視していたのも全部パーになってしまった。



「何で無視するんだよ〜」

「別に」


理由は一つに決まってるのに。

まさか電車に相澤がいると思ってなかった。しかも、隣に座って寝顔も見られてたなんて。

『可愛さもクソもないな』


さいってー!さっきの相澤の言葉を思い出すだけでムカムカしてくる。



「ごめんって。さっきの、可愛さもクソもないってのジョーダンだから、な?」

「…別に」


こんな返事をしてる時点で可愛さもクソもないって自覚してる。
けどなんか相澤相手だと、こういう返事のしかたになってしまう。


直さなきゃな、と思いながら前を向いて歩いてた。


その途中に。





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