この愛に抱かれて
4月に入っても、響子は学校に行けないでいた。


作本家は それどころではなかった。



借金の返済に奔走し、持っていたすべての資産を二束三文で売り払い、マンションも銀行の担保として明け渡すことになっていた。



すべてを失った明美たちは、自己破産するしかなかった。


借金は6億を超えていた。



「あたし達を恨むんじゃないよ」


衣類を整理していた明美が、部屋の入り口で立って見ていた響子に言った。


「こっちだって被害者なの。全財産失って、明日から住む家さえ無いのよ。・・・分かるでしょ?あんたを面倒見る余裕なんて無いの」



響子は黙って聞いていた。
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