この愛に抱かれて
「それにしても、よくもまぁ あたしのところに顔が出せたもんだねぇ」



女は嫌味な言い方で明美のことを軽く睨みつけた。



「おばさんには、ほんとご無沙汰していて、突然、電話なんかしてすみませんでした」



明美は、ばつの悪そうな顔をした。



目の前にいた女は、明美や茂の父牧村光男の実の姉、牧村道子だった。



「あんた達とは、もうとっくに縁を切ったはずだよ。
・・・そんなあたしに、いまさら何の用だい?」



「それは、よく分かってます。・・・分かってるけど、他に もう頼る人がいないんです」
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