この愛に抱かれて
道子は大きなため息をひとつつくと、響子のことをチラと見た。



「あんたの子かい?」



「いえ、お兄ちゃんの子です」



「茂の?」



「お兄ちゃん、死んだんです」



道子はさほど驚いた様子もなく、ベランダの網戸越しに置いてあった プランターの花に目をやった。


プランターに植えられていたアマリリスの赤い花を見ながら、


「そう・・・。あの子 死んだのかい」と言った。
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