この愛に抱かれて
「いいかい?あたしがやるからよく見てるんだよ」



道子は包丁の使い方を説明しながら、器用に野菜を切って見せた。


「やってごらん」



響子は、初めて握る包丁にビクビクしながら、怖々と皮を剥いた。



「最初は誰だって怖いもんだ。慣れればどーってことない。少しくらい指を切ったって死にはしないよ」


熱したフライパンに油を敷いて切った野菜を炒めた。



ヘラで掻き回すたびに、腕に油がはねた。



響子は道子の指示を受けながら黙々と調理を続けた。
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