この愛に抱かれて
「チェックメイトだ」

そう言うと、加藤直樹はチェス盤の上にナイトの駒を静かに置いた。

「やれやれ、また俺の負けか」

藤堂博史はテーブルの上のワイングラスを手に取ると赤のボルドーを飲み干した。


直樹と博史は休みを別荘で過ごしていた。

加藤家の所有する別荘は1万坪の広さを有する広大なものだった。

2階建ての本館はスイスの高原にあるような建物を模して作られていた。
本館の他には来客用のゲストハウスが5戸、使用人が生活する管理棟が2戸、それに大きな馬小屋があった。


本館の前には芝生を敷き詰めた庭があり、その中央に置かれたテーブルで直樹たちは昼食後のチェスを楽しんでいた。
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