この愛に抱かれて
道子は響子のために貯金をしていたのだ。


それは持病のために保険に入れなかった道子の、せめてもの気持ちだった。




響子は通帳を握り締めながら涙した。




あの道子が、自分のためにお金を貯めていてくれた。



道子はパートだったから、収入もそれほど多くはなかった。



ひとりで生活するには十分だったが、響子を養うようになって生活はギリギリだった。



響子も高校生になってからはアルバイトをして生活費を入れていたが、楽な暮らしではなかった。


そんな苦労を受け入れていたことに響子は改めて感謝した。
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