この愛に抱かれて
65歳を過ぎた老体に鞭打って佐山は息絶え絶えに駆け寄ってきた。

その様子から、ただ事ではないと感じた2人は席を立って出迎えた。

佐山は息を詰まらせながら藤堂博史に受話器を渡した。


「藤堂さま!お母様が!
・・・お倒れになられました!」


「え!?」


博史は受話器を受け取ると、硬直したまま電話にでた。

電話の相手は藤堂病院の事務長だった。


博史の母、昌江は自宅で頭痛を訴えて倒れ、その後、救急車で緊急対応のできる専門病院に搬送されていた。

病状はくも膜下出血だった。


電話を切った博史は言葉を失ったまま、その場に立ち尽くした。
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