この愛に抱かれて
街は夜中でもネオンが眩しかった。


和食、洋食、中華に焼肉、ありとあらゆる店が朝まで営業していた。


中華料理を食べた2人は、バーでダーツを楽しんだ。


ダーツを投げる富田の後ろ姿を眺めながら、響子は父親の姿を重ね合わせていた。


幼いころに見た茂の背中


大きく、温かい背中


響子の中に、富田に対する淡い恋心が芽生えていた。



自分の足で歩いてきた響子が、男に甘えたいと思った はじめての感情だった。



この人となら、平和な家庭を築いて行けるかもしれない。



子供の頃に失った、あの平和な時間を取り戻せるかもしれない。



そんなことを思い始めていた。
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