この愛に抱かれて
響子と付き合うことで、知らず知らずのうちに男としてのプライドは傷ついていた。


華やかなホステスとの付き合いは富田にとって夢のようなことだった。


友人にも自慢するようになり、特別な男になった気分でいた。


もちろん、はじめからヒモになろうと考えていた訳ではない。


響子のことが好きだから、会いたいがために店にも通っていたのだ。



だが、響子との給料の差は次第に富田の心を揺さぶっていた。


一介のサラリーマンの給料の3倍近くを稼ぎ出すホステスに、富田は嫉妬していたのだ。


ただ、酒の相手をするだけで、簡単に大金を手に出来る楽な商売


ホステスの見えない苦労など知ることも無く、ただ単にねたんでいたのだ。


そんなあぶく銭ならば、散財したって罪悪感は無い



富田はそんなふうに思うようになっていた。
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