この愛に抱かれて
ビル一階のフロアーではオープンセレモニーが開かれていた。



「あの、ここって?」



「今日、このビルのオープンなんだ」


男はシャンパンが入った細長いグラスを響子に渡した。



「あの、私・・・」



「少しだけ我慢してくれ」

男は小さな声でそう言うと、ビルのオーナーたちのところへ向かい、談笑を始めた。


すぐにホテルに直行すると思っていた響子は少しばかり拍子抜けした。


妙な緊張感だけがずっと残ったままだった。

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