この愛に抱かれて
「そうだ、連絡先教えてください。必ずお金返しますから」



「え?・・・あ、別にいいさ」



「ダメですよ。こんなご馳走までしてもらった上に、お金までもらったらバチが当ります」



「じゃ、ケータイの番号教えとくよ」


直樹は震える手を堪えるのに必死だった。


番号を呼び出すと、ケータイを響子に見せた。


「お名前って・・・」


「ああ・・・、中井です」



直樹は咄嗟に嘘をついた。



この状況で、言えるはずはなかった。
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