この愛に抱かれて
響子は番号を登録すると、その場で直樹に電話を掛けた。




「あ、出ちゃダメですよ。・・・それが私の番号ですから」



そして、財布から名刺を取り出し直樹に差し出した。


「お店のです」


「クラブ リオ?・・・ミナミって」



「私の名前です。キャバクラなんですけどね。よかったら遊びに来てください。」



「この店に勤めてるの?」


「はい」


「そうなんだ・・・」


「お金の都合がついたら電話します」


「ああ」


直樹は立ち上がれなかった。


全身の力が抜けていった。


直樹は微笑む響子の顔をじっと見つめていた。
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