この愛に抱かれて
直樹はテーブルに向けていた視線を、正面の響子に合わせた。



「済まない。響子さん」



「え?」

自分の名前を呼ばれたことに響子は驚いた。


なぜ この人は自分の本名を知っているのだ。


中井ではなく、加藤という名前。



響子は いぶかしげに直樹のことを見た。



「あなた、誰?」



「・・・加藤、・・・直樹」

直樹は声を絞り出すように、そう言った。
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