この愛に抱かれて
直樹の意識が戻ったのは翌日の昼過ぎのことだった。


目を開けた直樹は集中治療室の部屋の天井をじっと眺めた。


耳には周りの機械の動作音が絶え間なく聞こえていた。


ゆっくり首を傾け、ぼんやりとした様子で辺りをうかがった。


「加藤さん?」


直樹のことに気がついた看護婦が覗き込みながら声をかけた。


「加藤さん、わかります?」


直樹は小さく頷いた。

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