この愛に抱かれて
響子は冷たくなった恵美子の身体を揺すっては、

「お母さん! 起きてよ!」

と、何度も恵美子を呼んだ。


「響子ちゃん。お母さんね、もう死んじゃったの」

涙を堪えながら利恵は響子に言い聞かせた。


「ウソだよ! お母さんは死なないよ! 
お父さんは死なないよ!」

響子は両親の死を認められずにいた。


あの力持ちの父が死ぬはずなど無い。

病気ひとつしない母が死ぬはずなど無い。


響子にとって親は不死身なのだ。


2日後、告別式がしめやかに行われ茂と恵美子は荼毘に付された。


葬儀には直樹の両親、源太郎と節が参列した。
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