この愛に抱かれて
第1章 別れの時
平成3年 6月
長野県 北軽井沢
凛とした清清しい空気を切り裂きながら一頭のサラブレッドが初夏の新緑の中を走っていた。
地面を蹴り上げる蹄の音と馬具の揺れる音だけが静寂の森にこだました。
大きな白樺の木をいくつもくぐりながら人馬一体となった見事な手綱さばきで馬はなだらかな丘を一気に駆け上がった。
手綱を引かれた馬は雄叫びを上げながら丘の頂上で静止した。
つやの良い手入れの行き届いた栗毛の馬体だ。
熱気は汗となり全身から湯気となって立ち上った。
男は愛馬のクビ元を軽く叩くと、満足そうに辺りの風景を眺めた。
男の名は加藤直樹
21歳の学生だ
長野県 北軽井沢
凛とした清清しい空気を切り裂きながら一頭のサラブレッドが初夏の新緑の中を走っていた。
地面を蹴り上げる蹄の音と馬具の揺れる音だけが静寂の森にこだました。
大きな白樺の木をいくつもくぐりながら人馬一体となった見事な手綱さばきで馬はなだらかな丘を一気に駆け上がった。
手綱を引かれた馬は雄叫びを上げながら丘の頂上で静止した。
つやの良い手入れの行き届いた栗毛の馬体だ。
熱気は汗となり全身から湯気となって立ち上った。
男は愛馬のクビ元を軽く叩くと、満足そうに辺りの風景を眺めた。
男の名は加藤直樹
21歳の学生だ