この愛に抱かれて
「しかし さすがに良い走りだな。
後ろから見ていても惚れ惚れするぜ。この馬なら間違いなく優駿だって勝てるぞ」


「違いない。
でも、俺はこいつを手放す気は無いよ。
こいつは狭い競馬場なんかじゃなく大自然の中を走るために生まれてきた馬さ。
俺もこいつも誰にも縛られない。自由なのさ」

直樹は両足で軽く馬に合図をおくると軽やかに走り出した。




2頭が駆け抜けていったその森にピアノの音色が流れてきた。


ショパンの幻想即興曲


情熱的なリズム


軽快な鍵盤さばき


鮮やかな旋律は別荘の二階から響いていた。


弾いていたのは直樹の妹、遥だった。
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