この愛に抱かれて
街路樹で囲まれた大通りを抜けると、街の景色は住宅街から田園風景へと変わった。


今の時期は米の収穫期だった。


稲刈り用の大型機械があちらこちらの田んぼで作業をしていた。


田んぼの間を縫うように、車は家へと向かった。



春川の家に着いた響子を祖父母が出迎えた。


「えらかったな。響子」


祖父の春川恵慈が響子を抱き上げた。


響子はどうしたらよいのか分からず、少し困った顔をした。


「お前はな、今日からうちの子だ。
なーんにも心配することは無いんだぞ」


「ほれ、響子。ジュース飲みな」


祖母の美子が小さな容器に入った飲み物を持ってきた。


恵慈は響子を座布団の上に座らせた。


4人に囲まれながら、響子は恥ずかしそうにジュースを飲んだ。
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