この愛に抱かれて
そのころ、牧村響子は東京にいた。



東京郊外にある閑静な住宅街


築25年木造モルタルのアパート

そこの201号室が響子の住まいだった。


響子の父、茂は近所の印刷屋で印刷工をしていた。

妻の恵美子は専業主婦で、ふたりは見合い結婚だった。


印刷工の賃金は決して高くはなかったが、幼い響子に寂しい思いだけはさせたくないという茂の考えで、恵美子はパートを控えていた。


贅沢はできなかったが親子3人が暮らしていくには十分だった。
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