彼氏契約書
「美緒さん、お分かりになりました?

薫子さんは、多嶋社長のいとこだそうで・・・」

そう言ったのは蒼空だった。

蒼空には、社長直々に、薫子を紹介され、

半年間ここで預かったら、後は、社長秘書として、

本格的に始めるらしい。


「佐伯専務」

「・・何?」


「確かに多嶋社長のいとこですが、そんな事は一切気にせず、

一社員として扱ってください!

特別扱いされていては、一人前の社員にはなれないので」


真剣な表情でそう言った薫子に、私は笑顔を作った。


「勿論よ。多嶋社長に預けられた大切な人ですから。

でも、だからって特別扱いなんてしないわ、須藤同様、

同じ扱いをさせてもらうわ。私は厳しいわよ?」


私の言葉に、薫子は、満面の笑みを見せた。

「社長から、厳しい方だとは聞いてました。

だから、覚悟は出来てます。よろしくお願いします」

そう言って薫子は再び、頭を下げる。


一生懸命な薫子を、可愛いと思わない人はいないとこの時思った。
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