彼氏契約書
思い立ったように立ち上がる。

だってそうでしょう。大事な時期に、風邪なんか引かせたら…


「待って…傍にいて…お願い」

握られていた手が、僕を引き留めた。


「でも・・・」

「大丈夫、…この子はきっと強い子だから」

「…美緒さん」


「…なんて、本当は、蒼空にここにいてほしいの。

ずっとずっと、独りだったから・・・

薫子ちゃんが秘書になってから、蒼空との時間はさらに減ったし、

2人を見てたら、私なんかよりずっとお似合いだって」


「何言ってるんですか?

ずっと言ってるじゃないですか。僕には、美緒さんだけだって。

薫子さんは社長の親戚だから、大事に接してただけで・・・。

それ以上でもそれ以下でもありません。

…僕の事、信じられませんか?

…それとも、社長と、よりが戻ったんですか?」


抱き合ってる二人を見てそう思った。

「…私たち、同じみたいね」

そう言って、美緒さんは苦笑いする。
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