彼氏契約書
「じゃ、須藤はここから家に帰りなさい」

私はパッと蒼空の手を離し、にこやかな顔で告げる。


「…なんで須藤に戻ってるんですか?」

蒼空は凄く悲しそうな顔・・・その顔にズキッと胸が痛む。


「それは・・・」

それ以上言葉が出なくて、黙り込んでしまった。


「蒼空って言ってくださいよ」

「・・・」


「それに何で、社長が言おうとしたこと遮っちゃうんですか?

なんかやましい関係なんですか?」

「違う…違うわよ」



「じゃあ何で言ってくれないんですか?」

「…蒼空には関係ないから。アンタはただの彼氏代理人でしょ?

私の事に首を突っ込まないで」

「美緒さん!」

呼び止められたけど、私は走って会社の中に入った。

…専務室に入るなり、バタンと勢いよくドアを閉めた。


誰にも知られたくない秘密が、私にだってある。

だてに30年も生きてないわよ・・・

あんな契約書なんて無効よ・・・

これ以上、私の心をかき乱さないで。


…私には、やっぱり恋愛なんてできっこない。


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