彼氏契約書
【美緒side】

…どうして、こんなにも、この腕の中は落ち着くんだろう。

いつの間にか涙も止まり、蒼空の胸の中で、

蒼空の鼓動を静かに聞いていた。


「落ち着きましたか?」

耳を胸に当てているせいか、蒼空の声がこもって聞こえた。

その声が、少し、色っぽく聞こえたのは、蒼空には言わなかった。


「…おせっかい」

そう呟いた私。


「泣いてる女性を放っておけるほど、冷たくないんで」

蒼空は無表情に答えた。


「・・・仕事するから」

私はそう言って、蒼空から離れようとした…が。

蒼空は私の手を掴み微笑んだ。


「おせっかいついでに、仕事が終わるまで付き合いますから」

そう言うと、私の手をキュッと掴んで、すぐに離した蒼空は、

雑用をし始めた。


「・・・ホント、おせっかい」

そう言って少しだけ笑った。

おせっかいだけど、そのおせっかいが嫌じゃなかった。
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