彼氏契約書
私は必死に話を逸らし立ち上がった。


「待て、美緒」

行こうとする私の手を社長がギュッと掴む。


「…雄一さん、公私混同は止めてくださいと言いましたよね」

私はそっと、社長の手を解いて一礼すると、社長室を足早に

出ていく。



「オレはあんな別れ認めない。

オレは、ずっと、美緒を愛してる・・・」



「女性になら誰にでも、同じ言葉を言うくせに…」


「美緒!」

…バタン。


…もうお分かりになっただろう。

私と多嶋雄一は、昔付き合っていた。


デザインの専門学校を卒業したその年から、

私のデザインが気に入ったと、とあるデザインコンテストの審査員をしていた

多嶋雄一に拾われこの会社に入った。



雄一の指導の下、着々と腕を上げていき、

私はそれなりのデザイナーになった。

…指導されていくにつれて、私は雄一に恋をした。
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