彼氏契約書
少し息を切らせながら、専務室に飛び込んだ。

「どうかしましたか?…顔色があまりよろしくないようですが?」

私のデスクに、丁度、書類を置いている蒼空が、

私に問いかけてきた。


「・・・別に、何でもないわよ。その書類何?」

私は息を整えて、蒼空に近づき、書類を受け取った。


「なんでもないって顔じゃないですよ。

何があったんですか?今まで社長室に行っていたんですよね?

社長に何か言われたんじゃないんですか?」


その言葉に、一瞬動きが止まる。

バカ!…態度に出すなんて、私らしくない。

「何言ってんのよ・・・そうね、確かに何かあったわよ」

「なんですか?」


「私のデザインを製品化したいって言ってくれたの」

「そうなんですか?!それはよかったですね?

…ですが、会議にかけてからの方がいいのではありませんか?

他の社員の目もありますし」


・・・話を逸らせたことにホッとしつつ、

蒼空の言葉に同じ意見の私は、同じことを言った。


「私もそう思うわ。だから、社長には、会議にかけてほしいって

言ってあるんだけど…社長の権限で、製品化するって聞かないのよ」


「・・・」

黙りこくった蒼空。


「どうかした?」

訳が分からず、首を傾げる。
< 37 / 173 >

この作品をシェア

pagetop