彼氏契約書
・・・結局、蒼空の言う通りになってしまった。

定時の5時になると。

「はい、これで今日の業務は終わりです」

「…ぁ!」

持っていたデザイン画を取り上げた蒼空は、

サッサと封筒に閉まってしまって、ニコリと笑顔を浮かべた。


「私はまだまだ仕事がしたいんだけど」

ふて腐れ気味にそう言うが、蒼空は笑顔を絶やすことなく、


「約束しましたよね?」

そう言って、自分の唇に、指を押し当てた。

その行動に、思わず、ウッと言葉を詰まらせる。


『デート』

その約束のキス。

忘れられるわけがない。

忘れようと必死に仕事をしていても、四六時中蒼空と顔を合わせるのだから、

忘れられるわけがないのだ。


「っでも!「でもじゃないですよ、さ、行きましょう」

私のカバンを横からスルリと取り上げると、私の手を掴んでたたせる。

「須藤ってば」

「会社を出たら、蒼空って言ってくださいね?」

そう言ってフッと笑った蒼空は、私のカバンを人質に、

専務室を先に出ていってしまった。
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