彼氏契約書
蒼空はビールを、私は綺麗な色のカクテルを。

「・・・どうぞ」

マスターの言葉に、笑顔で返した。


「いつも弟がお世話になっているようで」

「・・・え?!」

その言葉に、驚きを隠せない。


「マスターは、僕の兄貴です。

高卒と同時にバーテンダーになるとか言って、5年。

その後、今度はフランス料理のシェフになるとか言い出して、

フランスに行ってたかと思えば、日本に帰ってきて、

この店を始めたんですよ…全く、好き勝手な兄貴で、困ってるんです」


そう言って苦笑いする蒼空を見て、なぜか和やかな気持ちになった。


「困ってるけど、…お兄さんの事、好きなのね」

私の言葉に、蒼空は笑顔で頷いた。


「オレに比べて、蒼空は真っ当な道を歩いてくれてるから、

兄としては安心なんですけどね・・・こうやって、お綺麗な上司と

一緒に仕事をしてる蒼空が羨ましい限りだ」

そう言って笑ったマスターは、蒼空のリクエストした料理を作るべく、

厨房の中に消えて行った。
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