彼氏契約書
「もう、いいじゃない、どんな格好でも」

今日は特別寒いのよ。パンツにハイネック、コートをきれば十分よ。


「今日が初めてのデートなんですよ?」

「?!」

…デート。その台詞を聞いたのは、もう何年も前だ。

仕事ばかりしだす前に唯一出来た彼氏と、数回だけしたデート。

緊張して、どうしていいかわからなくて、いい思い出なんて、

これっぽっちも覚えていない。



「ちょっと失礼します」

「あ?エ、ちょっと!」

寝室に入った蒼空は、クローゼットの中をあさり始めた。

ちょっと、ちょっと、勝手に人のクローゼット漁らないでよ!


「可愛い洋服あるじゃないですか、これに着替えてください」

「ワップ!」

顔に服を押し付けると、蒼空は寝室を出ていった。

・・・何で、蒼空の言うことを聞かないといけないのよ。


ブツブツ文句を言いながら、結局、

蒼空のゴーディネートの服に着替えた私。

なんて、お人好しなんだ美緒?と、自分に問いかけていた。


…ガチャ。

「・・・どうよ?」

・・・恥ずかしい。こんな格好。

ミニスカートに、白のセーター。フェミニンな格好なんて、

もう何年もしていない。

「・・・」

当の蒼空は、何の返事もない。
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