彼氏契約書
…私は足を止めてしまった。

「どうしたんですか、美緒さん?」

のこのこついて行った初詣の場所が、実家から近い神社で、

顔を隠していないと、家族か、もしくはご近所さんに、

ばったり出くわしそうな場所。

・・・こんな所、一秒だっていたくない。


「他にしよう」

「ダメですよ」

即答で拒否られた。


「何でよ!」

「ここ、僕が氏子になった神社だから」

「・・・」

…私もなんだけど。お宮参りも、何もかもすべて、この神社でやってきた。

…あれ?じゃあ、蒼空もこの近所に実家が?


「お参りしたら終わりなんだから、さっさと行きましょう」

「う~・・・」

嫌がる私を蒼空は無理やり境内に。

そして結局、お参りを済ませた。

…しかも、蒼空にお守りまで買ってもらってしまった。

交通安全と…縁結び。

「・・・プ・・・・クスクス」

「何が可笑しいんですか、美緒さん」

クスクスと笑いだした私を見下ろして、不思議そうな顔をした蒼空。

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