彼氏契約書
…相変わらず重い空気の中、

仕事が終わったのは、午後7時。

私は書類の整理をして、カバンにしまうと席を立った。


「…お疲れ様でした」

デスクの前に来た私に、笑顔で挨拶する蒼空。


「お疲れ・・・あのさ」

そこまで言って、蒼空を真っ直ぐに見つめた。


「どうしました?」

蒼空は私の次の言葉を待っている。


「我が儘言いたいんだけど」

「…我が儘、ですか?」

蒼空の問い返しに小さく頷く。

すると、蒼空はすぐに笑顔を浮かべ、二度頷いて見せた。



「初めてですね、美緒さんの我が儘なんて」

「…嫌ならいいの、忘れて」

「待ってください!何ですか?何でも言ってください」

私の手をしっかり握った蒼空がそう言った。



「…蒼空の家に行きたい」

「…僕の家・・・ですか?」
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