彼氏契約書
「一度行ってみたかったの」

「…あんまり綺麗じゃないですよ?

最近、忙しいから、片付けなんて適当だし」


そう言って苦笑いする蒼空。

「いいの、蒼空の家に行けたら、それでいいから」


「…分かりました、もう少ししたら仕事終わりますから、

それまで待っててくださいますか?」

「わかった、専務室にいるから、終わったら声をかけて」


「はい」

蒼空の返事に納得した私は、再び専務室に帰る。

そして、蒼空が来るまで、珍しく、窓の外を眺め、ボンヤリしていた。

…綺麗な夜景だ。

なんだか、泣けてくる。


「美緒さん、終わりました…美緒さん?」

…私の名を呼びながら、蒼空が私の後ろまでやってきた。

私はサッと目頭を押さえ、笑顔で振り返る。


「…泣いてたんですか?」

「まさか・・・なんで?」

「そう、見えたからです・・・」

「蒼空の、気にしすぎ」

そう言って笑った私は、先に専務室を出て、駐車場へ。
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