恋するほど   熱くなる
私は当日荒木さんと会場のホテルへ向かった。

「今日はクリスマスですね。私にとっていつもと違うクリスマスです。」

「美莉は毎年クリスマスはどうしている?」

「一人でケーキを食べて、アパートの家賃が上がりませんようにと祈ってます。」

「あっはっは、君らしい静かなクリスマスだ。」

「荒木さんは?」

「僕は休み無しで仕事さ、毎年。」

「荒木さんはお休みを取らないんですか?」

「この六年、休みなんてなかったな。仕事の虫だよ。」

「今日の発表でいったい誰が妖精に選ばれるのかしら?」

「まるで他人事のようだ。」

「荒木さんは私が選ばれてほしいと思っているんでしょう?」

「当たり前だ。君は平日は会社へ出勤しているごく普通の会社員だから、他のメンバーとは違う。他の女達は毎日事務所に来て毎日特訓しているが、君の場合は土日祝日のみだからな。しかもパートタイマーだ。一番時間がなかった。だが僕が君にやらせたかったことは全てやれたと思っているんだ。結果は単に結果でしかない。例え選ばれなくても未来は白紙だ。どうとでもなるし好きな道を歩いていける。違う?」

「その通りだと思います。」

「美莉、選ばれても選ばれなくても、メリークリスマス。」

「メリークリスマス、荒木さんいつもありがとうございます。」

私は会場へ向かう車の中で荒木さんとこんな会話をしていた。

とても充実していた。

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