恋するほど   熱くなる
須山と僕は学生時代からの腐れ縁ってヤツだ。

何年も会わなくても気心が知れていた。

昔は女のことでもめたが

当人の沙良が渡米したと聞き

何だかホッとしていた。

あの頃、彼女は僕でなく須山を選んだのだから。

僕の彼女への想いは封印された。

まだ心のどこか奥で彼女を想う自分を捨て切れなかった。

僕は美莉の過激な詩を須山に見せた。

彼は音楽業界の中で何年ももまれ

バンドのマネージャーとして渡り歩いていたから

美莉の詩が使えるものならと思ったのだ。

須山が今担当しているグループは国内でトップレベルの売上を維持していた。

『バリアー』という五人組のバンドだ。

超売れっ子ミュージシャンというのは

狂気の世界で生きているようなものかと

僕は漠然としたイメージしかつかめなかった。

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