恋するほど   熱くなる
バリアーはシングル無しで

サード・アルバムを先行することになった。

荒木さんが気をもんだ私の過激でない別人のような詩が

なぜか須山さんにウケた。

須山さんはとことん私の詩を利用した。

彼の裁き方は独特だった。

アルバムのタイトルは『切な』だ。

前とは正反対の曲風ばかりを集めた。

卓巳の低くて甘い声が悲しげに切なく響いた。

まるで聴いている女誰もが自分一人のためだけに彼が歌ってくれているものと錯覚できた。

素晴らしい仕上がりだった。

信じられないような売上になった。

アルバムの発表記念パーティーが小規模に行われた。

関係者だけだったが相当な人数だったようだ。

私は専属の作詞家だったが出席は許されなかった。

バリアーの作詞家は女ではダメなのだ。

荒木さんだけは須山さんに絶対来いと言われ

渋々出席したようだった。

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