恋するほど   熱くなる
ζ.魅惑の沙良
「おはようございます。」

事務所へ出勤した。

「美莉、元モデルだろ?何だい、その格好は?」

「私だってたまにはヒッピー風なスタイルを楽しみたいわ。荒木さん、最近の私の詩をどう思いますか?」

「そうだな。まともだ。まともすぎてちっとも面白くない。須山もそう言っていた。」

「私、アメリカへ行ってみたいんです。」

「突然、何?何しに行くんだ?」

「沙良さんに会いに行くんです。」

「何だって?冗談だろ?」

荒木さんは本当に驚いたようだ。

「頭痛がしてきた。」

「ダメですか?荒木さんが一緒に行ってくれないなら私一人で行きます。」

「ちょっと待ってくれ。考えたい。」

「彼女のコンサートのチケットをもう買ってしまったの。日は決まっているの。私、荷造りしたいです。」

「僕が君を一人で行かせるわけがないだろう?」

「荒木さん、私、荒木さんのこと大好き。」

「・・・・・」

「沙良さんとはメールでアポを取ったの。これが航空券です。ホテルもバッチリ予約済みです。」

「須山に休暇を取ると伝えてくるから、君は帰って荷造りしていいよ。」

「荒木さん、ありがとう。」

僕は美莉の考えていることがわからなくなってきた。

まさか沙良に会いに行くとは須山には言えなかった。

美莉の詩が煮詰まっているとでも言っておこう。

彼女がこれほど無謀だとは想像できなかった。

なぜ沙良に会いに行くのかも疑問だった。

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