恋するほど   熱くなる
私は荒木さんと渡米した。

「美莉、こっちよ。」

「沙良さん、初めまして、いつもメールでありがとうございます。」

「いいえ、いいのよ。隼人さん、ご無沙汰ね。もう何年も会ってないのにあなたってちっとも変わってないのね。」

「君も変わってないよ。」

荒木さんの表情は複雑だった。

「本当?あなたの中の私とは別人よ。よく見て。」

「沙良さん、お忙しいのにありがとうございます。サインをいただけますか?」

「美莉ったら、私のサインなんて意味ないのに。」

「ありがとうございます。」

私は彼女のCDにサインをもらった。

「隼人さんのお仕事は順調なの?美莉は稼ぐ?」

「荒木さんはいつだって私を支えてくれます。」

と私が答えた。

「その答えは今の状況にピッタリのようね。美莉のそのひと言で全てが通じたって感じよ。」

「沙良さん、オーケストラのプロデュースって難しいのでしょう?どこで学んだのですか?」

「あちこちでよ。美莉もピアノを弾くしバレエはクラシックでしょ、全ての楽器の全ての楽譜を頭に叩き込まない限り先へは進めなかったわ。」

「すごいです。沙良さんの頭の中には無数の回線が複雑に絡み合っているんですね?」

「美莉、その表現はピッタリね。あなたはやっぱりライターだけのことはあるわね。」

私は荒木さんと沙良さんと三人でカフェを出た。

「じゃ、今夜のコンサートをお楽しみにね。美莉、隼人さんをお願いね。彼に変な虫が寄って来ないようにそばにいてちゃんと見張っててちょうだい。頼むわよ。」

私は沙良さんが言った意味がよく飲み込めなかった。

荒木さんと宿泊のホテルへ戻った。

< 74 / 105 >

この作品をシェア

pagetop