恋するほど   熱くなる
沙良さんがプロデュースしたオーケストラによるコンサートは盛大な拍手で幕を閉じた。

荒木さんと私はロビーで彼女を待っていた。

「今夜は私も客席で見ていたのよ。」

と言った沙良さんは黒いドレスを豊満な身体にピッタリと身につけ

髪をアップにして大人の女がたっぷりと凝縮されたような有り様だった。

回りの外国人よりはるかに魅力的だった。

これが大人の女よ

処女の私なんて丸っきり子供だとつくづく思った。

「美莉、今夜だけ隼人さんを譲ってもらえるかしら?」

「は、はい。」

私は沙良さんの言葉にショックを感じた。

やっぱりこの後は大人の時間よね。

「ダメだよ、沙良、美莉を一人にはできない。」

「隼人さん、美莉はもう子供じゃないのよ。過保護は禁物よ。美莉、タクシーに乗せてあげるから真っ直ぐホテルに戻るのよ。」

「はい、私は大丈夫です。」

沙良さんと荒木さんに見送ってもらい

タクシーで一人ホテルへ帰った。

子供でなく、大人でない私って、一体何?

とタクシーの中でぶつぶつ言った。

荒木さんは今夜の沙良さんに満足できるのかしら?

それとも喧嘩して帰ってくるのかしら?

須山さんには絶対内緒だ。

< 77 / 105 >

この作品をシェア

pagetop