恋するほど   熱くなる
「沙良、なぜ美莉を帰したんだ?」

「あなたと二人きりになりたかったからよ。」

「なぜ?」

「だから、あなたと二人きりで話をしたかったからよ。」

僕は沙良とタクシーに乗った。

彼女は僕を予約したレストランへ連れて行った。

「乾杯しましょう?」

「何に?」

「あなたと私が再会できたことに。」

彼女はいつもマイペースだなと僕は思った。

「美莉はこの先楽しみな女だわ。私の手元に置きたいくらいにね。」

「冗談だろう?」

「本気で考えてもいいくらいよ。」

「君はもう帰って来ないのかい?日本に?」

「考えてないわ、今のところ。どうして?」

「別に理由はないよ。聞いてみただけだ。」

「貴志さんはどうしているの?」

「須山はミュージシャンのマネージャーだ。」

「彼のアーティストたちはきっと皆トップの座にいるんでしょうね?」

「そうだよ。須山は回りの全てを最大限に利用できるヤツだ。彼の腕は確かだ。」

「彼とは合わなかったわ。一緒に生活できる人ではなかったの。」

「だからこっちへ逃げて来たのか?」

「嫌な言い方しないで。当たっているけど。彼を選んだのは間違いだったと悔やんだわ。隼人さんはなぜ医者を辞めたの?貴志さんに聞いたのよ。私が原因なら誤るわ。」

「君のせいじゃない。僕自身、医者以外に夢中になれるものを見つけたからだ。」

「そう、それならいいけど。」

「美莉は君をネットで見てから君にぞっこんだ。」

「彼女とはメールで何度もやり取りしたわ。美莉はいつもあなたの支えに感謝していると言って、私にあなたを思い出させたの。あなたに内緒で貴志さんに何か聞いたらしいわ。」

「彼女はそういう女だ。回りの全てに気を使うんだ。」

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