恋するほど   熱くなる
僕は沙良と何年振りかで再会し

こうして話ができてむしろホッとしていた。

彼女はあの頃のままだった。

何でも自分で考えて前へ進むことができる女だった。

そして今の彼女には僕は必要とされないことを自分の中で確認できた。

僕の沙良への想いはこのまま封印し続け

永遠に解けないことを望んだ。

だが今夜の彼女はそんな僕の想いなど頭になく僕を誘った。

彼女は僕が断らないと決めてかかった。

僕は今夜だけは沙良に流されてもいいと思った。

彼女が僕に求めるものは何だろう。

いや、始めから求められるものはなかったと考えた方が楽かもしれなかった。

今だけ僕の腕の中で乱れる彼女にさえ

僕が封印した想いは解かれることはなかった。

今の僕には沙良を抱いても何も得られないとわかった。

彼女にはそんなことを知る由もなかった。

沙良は翌朝まで僕の温もりの中で眠った。

僕は静かに彼女を見守るだけだった。

「君には人を愛するために燃やせる情熱がないだけだ。それ以外は全て持っている女だ。」

沙良を抱いてそれがわかった。

もういいと思った。

彼女以外の女性を愛せるか不安だったが

この先出会えるかもしれないと思えたことが嬉しかった。

「沙良、君に会うことはもうないだろう。」

彼女に僕の声は永遠に届かない。

僕の中で彼女に対する全てが吹っ切れた。

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