恋するほど   熱くなる
「美莉、まだ痛む?」

「うん。」小声で言った。

「ごめん。」

「大丈夫よ、心配ないわ。」

「これからの美莉も僕が守りたい。」

「卓巳の言葉に私はいつも温かいものを感じるわ。」

私はベッドに横になって彼の胸に頬を当ててぴったりと身体を寄せた。

彼の息づかいに胸が上下するのを目を閉じて感じた。

「例え会えない日が続いても君の中にはいつも僕がいることを忘れないで。わかった?」

「うん、わかったわ。」

「君の詩は僕だけが歌う。完璧に歌い切る。それが売れようが売れまいが僕にとってはたいしたことじゃない。要は僕がどのくらい君の想いを理解できて、その想いをメロディーにできるかが僕には最も重要なんだ。」

「卓巳はいつから私のことを想ってくれてた?」

「須山さんに初めて君の詩を見せてもらった時からだ。僕は誰が書いたか、まだ男か女かもわからないうちにその詩を書いたヤツにのめり込んでしまった。すぐに曲が浮かんだよ。自分でも不思議な感覚だった。翌日美莉に会った時、全身に鳥肌が立って心臓がドクドクして止まらなかった。君がこの詩を書いたのか、君は僕を見てくれるだろうかと悩んだ。」

「卓巳が私のことで悩むなんて想像できないわ。」

「君はまだ僕のことをわかっていない。少しずつわかってくれたら嬉しい。君が僕のことを想う時、それが近くにいる時でも遠く離れている時でも、僕にとってすごく刺激される時なんだ。君の心をつかむことができなかったらおしまいだと思った。もう歌えないとまで思った。不安だった。」

「でも今はもう違う?安心できた?」

「美莉が僕の腕の中にいるだけで僕の心は震えっぱなしだ。人間は願いが叶うと幸福感や満足感や安心感に静かに震えるんだ。」

「それ、私にもわかる。じわじわっと心が満たされてくる感じね?」

「そうだよ。言い方が上手いね。君の中から出てくるもの全てに夢中になってしまうんだ。この気持ちは誰にも止められないと思う。」

< 82 / 105 >

この作品をシェア

pagetop