恋するほど   熱くなる
卓巳に女の詩を歌わせた。

須山は全てを利用して

その全てを金に替えた。

僕は須山と仕事をともにするようになってから

彼の手腕を少しずつ理解していった。

卓巳が歌う美莉の詩は丸っきり女の心情だった。

ファンの女達は彼の歌に狂った。

まるで本当の女の想いを彼がつかんでいるかのごとく

聴いている女の胸に突き刺さって全身を酔わせた。

須山と僕は美莉と卓巳の関係を知りながらあえて指摘せずにいた。

ビジネスに影響なければ問題なかった。

美莉は今年も秋のリサイタルに向けて関根先生のレッスンに励んでいた。

週一回だったレッスンが徐々に増えていった。

かなりハードだろう。

美莉は関根先生の相手役という大役に恥ずかしくない踊りを完璧にこなし

毎年舞踏業界で絶賛された。

バレエ団への誘いも多かったが

彼女はダンス・スクールにも関根バレエ団にも入籍していない特別扱いだった。

フリーの契約ダンサーという形でいた。

レッスンも先生とマンツーマンだった。

< 84 / 105 >

この作品をシェア

pagetop