恋するほど   熱くなる
「では、始め。」

先生はマイクに向かってひと声言った。

僕は美莉の相手が先生でなかったので少し驚いた。

たぶんリハーサルだからだろう。

美莉の相手はかなり若いダンサーだった。

先生の秘蔵っ子かもしれない。

彼は軽々と美莉を抱き上げて彼女を最高にリードした。

二人は柔らかく

時には激しい想いをぶつけ合い

絡み合い、絶妙な雰囲気をかもし出した。

僕の目にはスト-リーを奏でるダンサーの演技だとわかっていたが

今の二人の踊りを卓巳が見たら

相手が関根先生でなく若手ダンサーだ

問題あるなと思った。

本番は先生なのだろうか?

それとも彼か?

それとも美莉の役は両方を相手にするのか?

後で確認した方がいいだろう。

「オーケー、音楽を入れる。もう一度だ。」

先生の声が響いた。

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