秘密の暮らし
恋の化学反応
はぁ………………。
きちゃった………
放課後………………


「菜々ー?帰んないの?」

「あっ、ごめん彩!今日居残りあるの……」

「え?…………化学……??」

「うん………………。」

「そっか、………じゃあ今日は久しぶりに翔と帰ってやるか!」

「ごめん彩!今度クレープ奢るっ!」

「いーのいーの!じゃ!放課後デート頑張ってねっ!」

「で、デートぉ?」

「じゃね!」

あ、行っちゃった…………。
はぁ………
気が重い……………。


「おーい!橘?」

ホントやだなぁ…

「おい!橘?」

もぅ化学は嫌なんだってばっ!

「菜々!」

「!!!へ?」

「何回も呼んでんだけど?」

「え!あの、ご、ごめんなさいっ!」

気づかなかった…
ってか、菜々って呼んだよね?

「よし、始めるか。」

「…………。」

「今日も授業分かってなかっただろ。」

「………いや、分かってたよ?も、問題合ってたじゃん?」

「まぐれでな。」

ギクッ…
バレてる………

「分かんないなら分かんないって言いなさい!教えてやるから………」

「…はぁい。」

「ん。じゃあこのプリントやって。」

もらったプリントをやり始める…けど…
分かんない……
私と啓以外、誰もいない教室に時計の秒針の音だけが響く…

「あの…………」

「ん?」

「わ、分かりません……………。」

「…ここは、炭素と酸素の係数を合わせるんだよ。生成物との係数も考えながらな!そしたらここは……?」

「………2?」

「そうそう!出来てんじゃん!」

おっ
なんか分かるかも!

2問、3問とどんどん解けていく。

「…お前さ、要領いいのになぜ授業分からない?」

「ぇ、いや、その…」

先生のこと見てるから…
なんて言えないし………

「化学そんなに嫌いか?」

「嫌いってゆーか…………苦手……?」

「俺が教えてんのに。」

「すいません…。」

「来週の…テスト出来たらご褒美やるから。頑張れ。」

ご褒美ですと??
なんだろ………気になる………

「ただし、80点が絶対条件。」

「は?むり!無理無理無理!だ、だってよ?この私よ?いーっつも化学だけ40点代の私よ?」

「知ってるけど?」

「急にあと40点上げるのはムリです!」

「無理じゃねぇし、出来ないならご褒美はない。」

「そ、そんなぁ………」

「よし、今日はここまでっ!」

……………………
居残りが終わったことより
テストで80点とることに頭がいっちゃって…

そんな私に啓は小声で言った。

「先帰っとけ。」

ってね。


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