隣の席の姫野くん。
「ただいまー」
誰もいないと分かっていても、ついつい言ってしまう。
別に複雑な家庭環境ってわけでもなくて、ただ出張が多い両親とまだちいせぇ弟は、今なんだか九州にいるらしい。
昨日家に帰ると置き手紙があった。
こんなことはよくあることで、両親と弟とは月に一回会うか会わないか。
だからほとんど独り暮らし状態
「あ、秀平?今すぐ来い。橋田呼べるなら橋田も。じゃ」
橋田 という単語に驚いた反応をしていたような気もしたけど、めんどくさいから返事も聞かずに切った。
川瀬が泣き続けたあと、川瀬の家まで無事送り届けて今はもう夜中の12時を過ぎている。
川瀬の親にどう説明しようか困ったけど、ちょうどよく家にいない日だったらしい。
なんでも仲のいい両親で、よく旅行に行くのだとか。
川瀬の目は充血していて、少し、いやかなり腫れていた。
帰り道に川瀬は何度も俺に謝って、クラス全体に謝って
少し油断すると涙がこぼれ落ちていた。
ほんと、川瀬をこんなに泣かせてるやつ許せねぇ