隣の席の姫野くん。
俺はあまり表情が変わらないせいか、よく怖いとか何を考えているか分からないと言われる。
でも周りは気づかないかもしれないけどちゃんと表情があるし、考えてることだって他のみんなと代わりがない。
まぁ、わざわざそれを周りに説明しようとも思わないけど…
説明したい、誤解されたくないと初めて思ったのが橋田だった。
一年の秋のある日、説教くらってる川瀬と昂を二人きりの教室で待ってた俺たち。
その日に橋田が言ったんだ
『…もしかして今、緊張してる?』
俺の表情の変化に気付くのは家族と昂くらいだった。
どうして?と余裕ぶって聞いた俺に橋田は微笑んで
『いつもよりもここ、シワよってるよ?』
そう言うと自分の眉毛の間を指差した。
『くくく、山下くんって意外と分かりやすいんだね?』
正直に言ってしまえば、この時の橋田の笑顔にやられたんだ。
一度やられてしまったら、もう俺は橋田を目で追ってしまって
今まで気づけなかった橋田の純粋なところとか、川瀬を大切にしてるとこ
顔に似合わずズバズバと指摘するところなど、たくさんの良いところを見つけた。
見つける度に恋に落ちた。