隣の席の姫野くん。
「ごめん。もう大丈夫だよ!ありがとう」
どのくらいの時間が経ったか分からないくらい、ずいぶん長い間山下くんの胸を借りてしまった。
「あ、あぁ…。…っと、もう劇が始まる!!!行くぞ!!橋田!!!」
「っえ…!」
時計を見ると山下くんは慌てて私の右手を掴んで走り出した。
…うわぁ、手繋いでる…
山下くんの手は大きくて暖かかった
私と繋いでいない方の手はさっきの段ボールを抱えていて、男の子なんだなと改めて思わされる。
「はぁ、はぁ…」
私たちはバタバタと会場に入るともうすでに少し始まっていた劇を気遣うようにそーっとステージ裏へと向かう。
「…まだクライマックスじゃねーな。間に合ったか…」
「…そっ、だね」
なんであんなに走ったのに息切れひとつしてないの!?
「…ぷ」
そう思っていると隣から聞こえてきた笑い声
私が目を大きくして山下くんを見ると
「…いや、ごめん。目腫らして充血させて、息切れして汗かいて顔真っ赤にしてるから…」
え!?うそ!!!!!!
私は慌てて鏡を見る。
…なにこれ、ひどい…
山下くんが言ったのに付け加えて、髪はボサボサだし化粧もぐちゃぐちゃだし…
自分の顔をみて落ち込んでいると、山下くんが私の手をとり歩きだした。