隣の席の姫野くん。




このみの潤んだ目を見つめて、もう一度あの熱を感じようと顔を寄せる




ドキドキするけど、離れがたい心地よい温度




俺はこれからこの温度に全身を包まれて、俺の温度でこのみの全身を包んで、愛し合うんだ




俺って幸福者だな…




「こ、こう…」



「ん?」




「な、なんか音がするんだけど…」




顔色が元に戻った冷静なこのみの声に耳をすませる




…バンッ



…マ…だよ…




……パ…なさい…




ご…んマ…許して





段々と大きくなっていく音、いや話し声




「昂…こ、これって…」




二人で顔の血の気がなくなっていく。




「こ、このみ取り合えずふ、服…」





このみが乱れた服を慌てて直し出したとき




バンッ!!!!!




叩きつけるような音




…俺はこの音を知っている。




母さんが父さんと喧嘩したときに、ドアを開ける音




つまり…そういうこと。




「昂!帰ったわよ!!」




いつもは明るく優しい母さんの声が、低く恐ろしい




















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